<大相撲初場所>◇11日目◇21日◇東京・両国国技館

 横綱朝青龍(28=高砂)が、大関琴欧洲(25)をはたき込みで退けて11連勝を飾った。単独トップをキープし、復活優勝にさらに前進。周囲主導で、場所後のV旅行を計画していることも分かった。さらには、米国のバラク・オバマ新大統領(47)へエールを送る余裕も出てきた。ライバルの横綱白鵬(23)は、大関魁皇(36)を破って1差をキープした。東前頭12枚目栃煌山(21)が2敗目を喫したため、賜杯争いは両横綱のマッチレースの様相になってきた。

 その迫力に国技館がどよめき、沸いた。朝青龍は低く立ち合い、左からおっつける。押し切れないと判断するや、左横に回って琴欧洲の長い右腕をたぐり、とったりを繰り返した。2メートル3センチの巨体が前のめりになると、とっさにはたきこみ。勝負ありだったが、朝青龍は、両手をついた琴欧洲をめがけ、左腕を伸ばしたまま思い切り振り回した。

 プロレス技の「ラリアット」のようなダメ押し。空振りに終わったが、もし命中していれば、琴欧洲を吹っ飛ばしていたかもしれないくらいのド迫力だった。「最後まで勝負は分からないから」。流れの中での技だと主張。相撲内容について「考えた相撲だったな。がっぷり組むとうるさいし、できるだけ体の横につけていこうと思ったんだ」と満足そうに振り返った。

 単独トップをキープする11連勝。前日の琴光喜戦では、3場所連続休場の原因となった左ひじ痛を再発させて顔をしかめたが、この日はその左腕を最後まで使い切り、不安を一蹴。復活Vに1歩近づいたが、それでも「まだ、全然考えていない。毎日、毎日同じ気持ちで続けているから、それがいい集中力になっている。あとは流れだ」と慎重だ。

 一方で周囲が、場所後の「V旅行」の準備を始めていることが分かった。朝青龍に近い関係者によると、相撲の公式行事が一段落する2月8日以降から中旬にかけて、個人後援者らが朝青龍を海外旅行に招待することを計画中。2場所出場停止から「みそぎ」を済ませた昨年の初場所後にもハワイへ渡航したが、兄の結婚式に出席するためで、優勝ごほうびの旅行は初めてだ。同関係者は「セブ島あたりが候補になるかも」と話した。

 かつては「土俵の態度が悪い」と指摘されたであろう行為さえ、観客が喜ぶ現象に、朝青龍自身も気をよくしている。支度部屋を出ると、オバマ新大統領について笑顔で語り始めた。

 朝青龍

 昨日、遅くまでテレビで(就任式典を)見てたよ。すごいな。期待すること?

 同じ地球人として『世界経済の暴落を何とかしてほしい』とみんな思っているだろ。それと同じ。経済がよくならないと、平和にならないからな。

 さらに報道陣から「横綱も『CHANGE』という感じですか?」と問われると、「どういう意味だ。フン。お前が変われよ」と即座に切り返した。相撲内容も発言も「らしさ」を完全に取り戻した朝青龍。このまま「V旅行」まで、本当に突っ走りそうな気配だ。【柳田通斉】